6.リピート率90%以上!続けたくなる日本語授業の進め方

2020年10月31日

前の記事で「顧客の獲得方法」について説明しました。

フリーランスとして収入を得るためには、まず新しい顧客を獲得しなければなりません。

ですが、それ以上に大切なのは、サービスの利用を始めてくれた生徒さんに、それを継続してもらうことです。

新しい顧客を獲得できるようになっても、次から次へとサービスを受けるのを止めてしまうようでは安定した収入を得ることはできません。

生徒さんが満足できる質の高いサービスを続けることで、収入を得られる期間が長くなり、更に新しい生徒さんを紹介してくれるという好循環が生まれます。

 

「どうやって授業内容を決めればいいんだろう」

「いろんなニーズに対応できるだろうか」

 

学校で教えた経験がある方でも、一人ひとりの生徒さんに合わせて授業プランを作るという経験をしている方は少ないと思いますので、このような不安があるのではないでしょうか。

この記事では、生徒さんが満足してくれる授業をどうやって作ればいいか、というテーマについて、①授業開始前面談、②教材選び、③授業プラン、④授業場所の確保、の4点に分けて書いていきます。

 

授業開始前面談

授業プランを作る上で強くおすすめするのが、授業を開始する前に生徒さんと面談をする時間を作ることです。

私は生徒さんから問い合わせがあったら、まず一度会って(またはオンラインで)授業のスケジュール、内容、授業料、規約などについて話します。

この面談は無料で行っており、面談の結果、成約に至らなくても費用の請求はしません。

私はこの過程が授業の満足度を高めるために一番大切だと思っています。

生徒さんの職業、目的などは本当に多様で、「会社員だからビジネス敬語が必要だろう」「主婦だから日常会話についての授業がいいだろう」という決めつけは危険です。

・今の生活の中のどんな場面で日本語を使うのか

・目標は何か、何ができるようになりたいか

・どんな勉強の仕方が好きか、または向いていそうか

という点を可能な限り詳しく聞いて、見て、深堀りします。

その結果、最初は生徒さんが「ビジネス敬語を勉強したい」と言っていたのに、実は同僚とのコミュニケーションがしたいだけで、そのためには敬語の勉強ではなく、会話のトレーニングをしたほうがいいですよね?となったり、本人も自覚していないニーズが判明することがよくあります。

生徒さんのニーズが深堀りできたら、それに合った授業プランを提案しましょう。

そのときには、理由も一緒に説明して、どう思うか生徒さんに聞いてください。そして反応によっては、プランを変えます。

一方的に決めるのではなく、共同作業で決めることで生徒さんの納得感も高まり、満足度も高くなると思います。

また、授業の内容に満足しているかどうかは、授業開始前だけでなく、初回の授業が終わったとき、始めのパッケージが終わったあと、授業の内容が合っていないのでは?と感じたときなど「この内容でいいですか?」「もっと勉強したいことがあったら何でも言ってください」と確認します。

きちんとプランを立てても、やってみてやっぱり違った、他の勉強をしたいということはよくありますから、細かく確認して満足度を高めることは重要です。

 

教材選び

面談を通じて生徒さんのニーズが把握できたら、次は教材選びと授業プランを作ります。

始めに言っておきますが、必ず教科書を使わなければならないというわけではありません。

ですが、もちろん教科書を使う場合も多いですので、まずはおすすめの教科書をご紹介します。

私は主要な教科書に目を通して、初級からこの教科書、JLPTならこの教科書、とある程度パターン化しています。

教科書を含め、よく使用している教材は以下の通りです。

 

初級:みんなの日本語初級、げんき

初中級:できる日本語初中級

中級:できる日本語中級

JLPT:日本語総まとめN3-N1(文法、語彙、読解)

敬語:新にほんご敬語トレーニング

漢字:イラストで覚える漢字1,000

その他:生徒さんの会社で使用する資料、新聞記事、News web easy

 

各教科書の特徴は別記事「これさえあれば大丈夫!日本語教師に必要な教科書、参考書はこれ!」にまとめてありますので、より詳しく知りたい方はご覧ください。

この教科書については教案、教材を準備しておいて、いつでも使えるようにしています。

教科書を使うことによるメリットは3つあります。

1つ目は文法、語彙を網羅的に勉強できるということです。

教科書も万能ではないですが、特に初級では文法、語彙がうまくまとまっているので、効率的に勉強できます。

2つ目はあらかじめ準備ができるということです。

毎回生徒さんの要望に応じて学習項目や語彙を選んで授業を作ることは大変です。

もちろん場合によってはその必要もありますが、全ての生徒さんにその対応をするのは手間がかかりすぎます。

教科書を使うのであれば、自分であらかじめ教案、教材を作り込んでおくことができますし、準備の効率が上がります。

3つ目は生徒さんが日本語の上達を実感しやすいということです。

どういうことかと言うと、教科書を使うと今日は1課、来週は2課と進度がはっきりわかりますし、教科書を見返せば、「何ができるようになったか」がひと目でわかり、自分の日本語が上達していると感じやすいです。

それによって生徒さんの授業に対する満足度が上がりますし、教科書の内容がまだ残っていれば、授業を継続してくれることも多くなります。

手前味噌になりますが、私が生徒さんから一番評価してもらえていることは「授業の準備をよくしている」「文法の説明がわかりやすい」ことのようです。

そこで、このウェブサイトでどのような教材、教案を授業で使っているかについても公開していきますので、ご参考にしていただければ幸いです。

 

授業プラン

もっと具体的に授業プランをイメージしてもらうために、実際にどのようなプランを立てるか、いくつか例をあげます。

 

A.外交官・30代男性

【学習者情報】

  • 来日したばかりで、今まで日本語を体系的に学んだことはない。
  • 自分であいさつなどごく簡単な言葉だけは勉強した。文字は全然わからない。
  • 日本には3年間住む予定で、まずは生活に必要な会話、将来的にはビジネスレベルの会話もできるようになりたい。
  • 週1回1時間授業を受けたい。

 

【授業プラン】

  • ひらがな・カタカナは自学をしてもらい、毎回授業のとき、読み書きのチェックを行う。
  • 教科書はみんなの日本語を使用。授業の前に自分で単語を覚えておいてもらい、授業のときチェック、それから文法、会話の練習。
  • みんなの日本語の文型練習帳を宿題とする。授業で勉強したら、その部分をして提出してもらい、添削する。

 

【ポイント】

  • 初級の生徒さんで、ある程度長い期間勉強するつもりという方には体系的に覚えたほうが早道だと思いますので、基本的には教科書を使うことを勧めています。
  • 文字、単語などの「単純に覚える活動」に教師は必要ないので、それは自学でしてもらい、授業中は文法、会話の練習を中心に行います。もちろん自学をしていない生徒さんもいらっしゃるので、その場合は授業中にも文字、単語を覚えるための活動をします。
  • 個人差はありますが、ただ覚えさせるための反復的な練習より、教師がいてこそできる会話の練習、わかりやすい文法の説明などのほうが、生徒さんの満足度は上がると思います。また、書く活動は時間がかかる場合が多く、あまり生徒さんの満足につながらないと考えていますので、授業内ではあまりしません。

 

B.日系企業勤務・30代男性

【学習者情報】

  • 大学生のとき、日本に留学したことがあり、N2に合格している。
  • 日常生活、職場で日本人が話している内容はだいたい理解できているが、自分から話すのは自信を持てず、あまりスムーズに話せないと感じる。
  • 転職を考えており、ステップアップのためにN1にも挑戦したいと思っている。
  • 会話練習とJLPTのための勉強をしたい。文法はN2に合格はしたが、まだ100%理解できていない部分もあるのでN2の復習から勉強したい。
  • 週2回1時間ずつ授業を受けたい。

 

【授業プラン】

  • 2回の授業のうち、1日はJLPT対策、もう1日は会話練習を行う。
  • JLPT対策…日本語総まとめN2の文法、語彙を使用。文法は1日分(ただし、十分理解できているものは飛ばす)の文法説明と文作成、会話などの練習、語彙は自学で授業前に覚えてきてもらい、疑問点について質問。その後、語彙を使った自由会話を行う。
  • 会話練習…ニュース記事を読んで、①わからない言葉の質問に答える、②その会話についての意見を話させる、③議論する、の流れで進める。

 

【ポイント】

  • 日本語総まとめは文法、語彙、読解、聴解のように細かく分かれているので、生徒さんの苦手なところに合わせて使えば便利です。
  • 会話練習は基本的に何でもいいんですが、いろいろな話題を取り上げることで、いろいろな語彙に触れられるように意識します。毎回「先週の週末は何をしましたか?」という話題だけだと、言葉が限られてしまいますよね?なので、授業の前にこちらが面白そうなニュースをいくつかピックアップして送り、それを授業の前に読んでおいてもらいます。生徒さんにとって興味深いニュースを選ぶようにしますが、話題が偏りすぎないようにも注意します。そのため、始めの段階で生徒さんの興味・関心があることをできるだけたくさん聞いておくといいと思います。

 

次は、ほとんど全ての生徒さんに共通して行っていることについて話します。

 

近況、ニュースなどについて自由会話

初級の生徒さんは文法、語彙の勉強だけだとどうしても会話練習が不十分になりがちなので、既習の文法、語彙を使ってできるだけ会話をします。

そのときのポイントですが、まずこちらから質問したあと、生徒さんにも質問役になってもらうことです。

一対一の会話練習になるとどうしても教師が質問役になることが多いので、生徒さんが自分から質問して会話を広げることに慣れてもらうように意識します。

生徒さんが複数のときは、一方が質問役、もう一方が答える役で二人で会話してもらうことも多いです。

 

日本語に関する質問

私の生徒さんは今のところ100%日本で生活している人ですので、日常生活の中で困っていることなどがある場合が多いです。

「こんなときは日本語でどう言えばいい?」

「日本人にこんなことを言われたけどどういう意味?」

「(郵便物に)なんて書いてあるの?どういう意味?」

など生活に密接に関わることを知りたがっている人が多いです。

生徒さんの日本語レベルによっては説明が難しい場合もあるんですが、できるだけ答えるようにしています。

生徒さんにとっては、自分が、数少ない日本で相談できる日本人かもしれませんし、丁寧に答えることで、単純に日本語を教える以外の価値も感じてくれるかもしれません。

 

 

授業場所の確保

最後に授業場所の確保について話します。

どんな場所で授業をすればいいか、気になる方も多いと思います。

授業場所は意外に大切で、落ち着かないところだと授業に対する満足度も下がってしまいます。

私の場合は基本的には生徒さんに場所を確保してもらい、できなければカフェなどを提案して行うようにしています。

実際に授業をしている場所を挙げながら説明します。

 

事務所

生徒さんが会社に勤務している方なら、会社の会議室などを使って行う場合があります。

会議室などであれば、周りを気にしなくてもいいので授業はしやすいです。

ただ、周りで人が仕事をしている部屋などでしようとする人もいるので、その場合はもっと集中できる場所に変更するのを促した方がいいかもしれません。

 

自宅

生徒さんの自宅で授業を行う場合もあります。

こちらも周りに人がいない状態で授業ができるので、集中できます。

ただ、危険を感じる場合もあると思いますし、特に女性の方は避けた方がいいと思います。

 

カフェ

事務所や自宅など、周りに人がいない場所を確保することが難しいときはカフェで授業を行います。

授業を行うカフェを選ぶときは、①広い、②うるさすぎず、かつ静かすぎず、話をしても大丈夫な雰囲気、③メニューが高すぎない、カフェを選びましょう。

とても静かで、店内が狭く、隣の席の人との間隔が近いようなカフェだと、隣の人に聞かれるのが恥ずかしいと感じる生徒さんもいます。広くて周りにも話している人がいて話しやすい雰囲気のカフェが授業に適していると思います。

 

レンタルルーム

生徒さんが複数の場合、カフェで授業をするのは難しいです。

そんな場合にはレンタルルームで授業をすることもあります。

「SPACEE」というウェブサイトでは、簡単に予約できるレンタルルームを探すことができます。

都市部ではそれなりの数のレンタルルームがあり、場所によっては安価に借りることもできるので、利用を考えてもいいです。

ただ、その場合も費用は生徒さんに出してもらうよう話しましょう。

 

オンライン

番外編ですが、授業をオンラインで行う方法もあります。

オンライン授業は準備さえしていれば、とても簡単に行うことができますし、教師にとっては移動の時間の節約に、生徒さんにとっては交通費の節約になります(交通費を実費で請求している場合)。

2020年はコロナ禍もあり、対面授業からオンライン授業に移行した生徒さんも多かったです。

その前までは全員対面での授業をしていたのですが、オンライン授業は生徒さんにとっても都合がよく、コロナが落ち着いたあとも半分以上の生徒さんはオンライン授業を続けています。

便利なツールとして後で説明しますが、オンライン授業は生徒さんの利便性を向上させることができるので、ぜひ利用しましょう。

 

 

この記事では生徒さんが満足してくれる授業をどうやって進めていけばいいかについて書きました。

授業を継続してもらって、安定した収入を得るためには生徒さんの満足度を高める必要があり、面談や授業プランはそのための重要なプロセスです。

参考になった部分があったらぜひ実行してみてください。

 

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Posted by アズマ